百年住宅に 新しい風が入った
岡山県の玉島は江戸、明治時代に栄えた港町だった。今もその面影を残す商家が城のような優美な構えを昔のまま残している。
焼き物の町らしく瓦タイルを使い、芋目地や網代張りで、上品なモノトーンの日本建築に変化とリズムをつけている。
間口の大きい玄関を入ると、広いたたきがあり、左が奥。右は事務所と応接室になっていた。奥には一階だけで部屋数が十二もある。坪庭がいくつもあり、どの部屋からも庭を見ることができる。家はもちろん、どの庭も手入れが行き届いていた。3代目のご主人と須磨子さんが家を守ってこられた。
商家の伝統の重みの前に時の流れが止まった。
最近、建築家の次男が家族の反対を押し切り、応接室を改造して窓を作った。
外には木製の面格子がはめられ、まったく違和感がない。変化を好まなかった百年住宅に新しい風が入った。
玄関のたたきをまっすぐ進むと広い中庭にでた。中庭を挟んで木造の工場と倉庫がある。家と商売がひとつになった商家の姿だ。かつては何人もの女工が働いていたであろう、小学校の木造校舎のような広い空間にミシンが何台も並んでいた。
足袋の生産は安い中国製品に負けるが良い足袋を求める人が少なくない。お客様と共鳴しあう商売を維持してきた。そんな自信とプライドを家は語っている。