丹波篠山市にある八上城跡の帰り道、偶然通りかかった沿道に大きな木造校舎を見つけた。外壁の縦と横のラインが作る大胆さと、こげ茶の下見板に薄いピンクの窓枠と縦押し縁が走るコントラストが校舎をやさしく包む。学校の入口には景観形成重要建造物の紹介があった。今も100人ほどの生徒が通っている。
2010年耐震性不可の診断で決まっ建替えを大規模木造校舎改修工事に変更できたのは愛着のある木造校舎を残そうと、卒業生を含めた住民が立ち上がったからである。そこには親子二代、三代に続いた学び舎への思いが伝わる。
そして2012年に耐震改修を含めた保存大改修工事が竣工した。当時流行ったアールデコ調の外観がよみがえり、竣工式には児童や住民、教職員の協働で作詞した「公舎のうた」が合唱された。大きな校舎が2棟並んでいる姿は壮観だが広い運動場から見える姿は学び舎にふさわしい落ち着いた印象を与える。
八上小学校の大改修工事が完成して、隣町の西脇市立小学校保存の住民運動がおこった。八上小学校でできたことが私たちにもできると確信したそうだ。しかも西脇市出身の世界的な画家、横尾忠則氏が応援したことが大きい。わずか3年で保存大改修工事に着手することになった。