恵まれた環境を取り入れ、居心地の良さを追求した3世代住宅
箕面駅の近く、自然が残る住宅街の一角に建つK邸は築40年で老朽化が進んでいた。
リフォームして再生する計画で調査を進めたが、次の4点で建て替えを検討することになった。
一つは構造材の柱の径が3寸(9㎝)足らずで、梁も小さく耐震性に疑問符が付いたこと。
二つ目は基礎の高さが25㎝で絶えず湿気ている状態であったこと。
三つ目は第二世代が今後ともここに住むこと。
そして四つ目はご夫婦がお元気で一大事業に取り組もうとする気力があること。
を上げることができる。
建替えにあたってのご要望は
1、風が通る明るい住まい。(奥様)
2、リビングが広い。(長女)
3、お風呂が大きい。(ご主人)
4、植栽をたのしむ大きなテラス。(奥様)
5、ユニークな外観。(ご主人)
6、駐車場 (ご主人)
7、ロフトのある子供部屋(お孫さん)であった。
敷地は24.4坪で、しかも変形している。そこに建築面積は1階16坪 2階11.5坪 合計27.5坪の家を設計した。駐車場の位置、玄関、階段、水回りの位置など検討課題が多く悩んだ。しかしその回答は意外なところにあった。既存の建物の横に物置があったが、そのスペースに水回りを全部配置することができないか考えた。するとすべてが解決した。玄関を敷地の入り隅に設け左はリビングキッチン、右は水回りへ動線を描いた。そして敷地通りの形で建築することで広さを確保した。駐車場は道路に面したスペースにクルマの大きさで作った。その結果、20畳のリビングダイニング、3.5畳のキッチン、5畳の寝室に、玄関と水回りも図面でご覧いただける広さになった。
洗面とトイレと洗濯スペースを一つにすることは若い人の反対があったが、開放的で使いやすく結果的にはお孫さんたちも喜ぶことになった。浴室はコストとメンテナンスを考えるとユニットバスだが、お風呂好きなご主人の希望がゆったりくつろげる広い風呂であった。敷地の形に合わせた広い空間に御影石調の大きなタイルを壁と床に貼って完成した。仕事が終わって毎日スーパー銭湯に通っていたが、今は1時間の長湯で体を休める。水回りの屋上は楽しみな菜園としてこれから作っていく。
敷地いっぱいに建った家は八角形の家になってユニークな外観を生みだした。タイルとサイディングの組み合わせは外観の表情を豊かにした。夜になると、2階の階段ホールに納まったステンドガラスが玄関とテラスの闇を柔らかく照らす。昼と夜の表情が変化し面白い。
2階は若い人が住むので、階段室を屋外にいるような開放的な空間にした。広いスペースに傾斜天井の高い空間を作り、天井と壁の一部にナラ材の板を貼り、移り変わる自然に溶け込むことができる。階段の手すりは奥様の大好きな手作りのアイアンを使い、美術館のような空間に仕上げた。恵まれた環境と限られた敷地を上手に生かした工夫はたくさんの実りをつけた家に生まれ変わった。粘り強く居心地の良さを追求した結果でもある。
耐久性の高い吉野桧で熟練大工が建てた家は耐震性能も高い。快適で安心な住まいは百年住宅を目指す。
【POCO Vol.31 住いの建替え より】