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No.26 素顔の屋敷 新居浜市内 広瀬宰平邸

/ 100年住宅を考える

偉人の住まいはその人を語る道具である。そこには思考、情緒、意志、行動など、ユニークな物語が詰まっている。

例えば夏目漱石、志賀直哉、三島由起夫といった文学者から岩崎与太郎、徳川慶喜、大隈重信など経済界、政界で活躍した人の住まいが今も大切に保存され、後生にその業績を伝えていることがその証しと言えるだろう。

 

新居浜市で見つけた広瀬宰平の屋敷にもそんなパワーを感じた。新居浜市は住友家の企業城下町である。

広瀬氏は激動の明治を経営者として生きた。住友家中興の祖として今も尊敬を集めている。そして新居浜市の発展にも多大な貢献をしている。彼の活躍ぶりは邦光史郎著 集英社文庫「住友王国」に詳しく紹介されているが、住まいについての記述はなく、今回の訪問は大変興味深いものであった。屋敷は住友家によって大切に保存され、敷地の一部には近代的な歴史記念館が市民に開放されている。

 

この屋敷を紹介する。山を背にした大きな敷地に数寄屋風の素朴な邸宅とそれを囲む大きな回遊庭園がある。庭園はどこまでが庭でどこからが山か分からないほど自然に溶け込んでいる。邸宅も庭も当時のまま保存され、何時主人が戻っても迎えられると言いたげである。山門のような冠門から玄関へまっすぐ伸びる石畳に気品を感じる。石畳を挟んで左に庭園が広がり、右は納戸や事務所が並んでいる。

 

 

 

 

 

内玄関は思いの外こじんまりと普通の民家風であるが、座敷に上がると壁のない和室が縦横に広がっていた。間を仕切る障子は座って目線が通る高さに透明ガラスが嵌められており、座って四方を見ると奥の方まで見渡すことができる。これは主が座って使用人の動きがすべて分かる工夫である。広い台所まで見通せるから驚きである。いかに人の管理に力を注いでいたかがわかる。

 

 

 

 

また、奥の部屋が暗くならないように各室の天井には天窓が設けられていた。奥の南に面した21畳の和室には奥行き1間、巾2間の一段高くなった床の間が誂えてあった。住友家を想定してのことだろうか。

内玄関を正面に進むと驚くほど広い台所がある。大勢の使用人が働いていたことが想定できる。作りを見ると吹き抜けのスペースに洗い場、調理場、配膳などが合理的に配置され、働きやすい台所であったことがわかる。

 

 

 2階に上がる階段もユニークである。途中踊り場があり両方から上がる仕掛けになっている。「時は金なり」か。

 

 

その階段を2階に上がると雰囲気は一変する。間仕切りは襖で仕切られ、丸みのあるシンプルなランマが緊張の抜きを演出する。障子を開けると回り廊下を囲む意匠の凝ったガラス障子と手すりが心を和ませ、変化に富んだ四季の庭を取り込む。居るだけで心地よく、自分に語りかけている自分にハッとさせられた。

 

 

忙しく働く主にとってこの空間は命の源泉であったのだろうか。晩年この部屋(望煙楼)から新居浜市街の発展を象徴する煙突の煙を見るのが好きだったそうである。

 

 

果たして、彼は人を掌握し会社と街の成長にヒントを見つける為、この屋敷を造ったのであろうか。ここは激動の時代を走り抜けた、希有な経営者の実像を物語るものであり、また一人の人間として孤独と弱さを実感する屋敷でもある。その限界を超える為に邸宅や庭の作りに懲り、他に見られない工夫を生み出したと言えなくもない。

 

【POCO Vol.25 百年住宅を考えるより】

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