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No.31 自立した港町 香川県引田

/ 100年住宅を考える

 

 香川県と徳島県の県境に引田という小さな港町がある。引田と書いて「ひけた」と読む。潮が引けたからくるのか、海とかかわりの深い歴史がある。室町から続く漁村だが、三方を山で囲まれた交通は船しかなく、隣町に行くにも船で往来していた。やがて、江戸時代になると廻船業が栄え、豪商が生まれ、町屋町が作られた。瀬戸内海沿いの典型的な町づくりである。しかし、この町を歩いて不思議に思ったことは城下町の町割りが残っていたことである。引田駅から歩くと道が卍型に曲がって目的地になかなか辿れない。戦国時代、阿波の大名が港の横にある城山に出城を構えた名残だろうか。行きつ戻りつしている内に塗屋造りが立ち並ぶ表通りに出た。

 

 

 通りには、明治・大正時代、醤油と酒の醸造業で栄えた「讃州井筒屋」と「かめびし屋」の土蔵造りの建物が広い敷地に並んでいた。「かめびし屋」は今も醤油の醸造元として有名だ。土蔵造りの大きな建物や塀の漆喰壁が赤色に染められ異彩を放っている。まるで醤油をぶっかけたような赤い壁が観光客を呼ぶ。

 

 

 隣にある讃州井筒屋の屋敷はけた外れに大きい。長屋門を入ると広大な中庭が広がり、周りに土蔵造りの蔵が立ち並ぶ。右に屋敷があり奥の間、かまや蔵、離れ、茶室、奥座敷が屋敷の中庭を囲って並んでいる。奥座敷は八畳の上座敷と八畳の次の間からなり、書院造で天井が高く風格がある。お殿様がお忍びで来られていたので、お殿様専用の表門がある。井筒屋の主人は屋敷にいろいろな趣向を凝らした家づくりを試みている。特に茶室の柱は一本一本種類の違う細い柱を使い、欄間には障子を閉めると千石船が現れる仕掛けを見ることができた。

 

 

人形造りもすごい。各部屋を歩く使用人、毬やかるたで遊ぶ子供たちなどお殿様やお姫様を楽しませる趣向を凝らしている。茶室にはお茶を運ぶからくり人形が働いていた。贅を尽くした暮らしの絵巻物が往時の繁栄を彷彿とさせる。

 

 平成に入って井筒屋の商売が立ちいかなくなり、競売に出された時、市民運動がおこり市が購入した。さらに2億円の予算を組み、朽ちかけた屋敷を改修した。上手に改修工事を終えた屋敷は往時のままの姿を今に伝えている。市民運動が町おこしにつながった珍しい事例だろう。

この日はたまたま世界人形祭が開かれ、それぞれの家に各国の人形が展示されていた。どの家も玄関の横に「見世の間」があり、家を開放して人形を飾っている。祭りを盛り上げようと地元の高校生からお年寄りまでたくさんの市民が行き来して楽しんでいる。

 

 

 通りの中ごろに洋館が建っていた。外壁はテラコッタのタイル張りで八角形窓が並ぶおしゃれな建築は、元郵便局で木筋コンクリート造りという珍しい建築物である。昭和七年に建築され昭和52年に閉局した。今はオーナーの田井さんが「カフェヌーベルポスト」を運営している。内装は当時の郵便局のままのこし、吹き抜けになった格天井を見せている。オーナーの田井さんは雰囲気を残すことにこだわり営業しているが、よく見ると所々傷みもある。残す苦労は大変なことだろうと思う。引田の町並み保存は市民活動で毎月のようにイベントで盛り上がっている。

 

 

だから町もきれいで雰囲気も良い。表通りから下った二筋目を歩いた。まるで昭和30年代に戻ったような風景に出合って驚いた。よく見ると明治、大正、昭和の家が混在している。また行ってみたくなる町である。

 

【POCO Vol.31 百年住宅を考えるより】

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